こんにちは。新規事業部の吉田寛生(よしだひろき)です。
山田修整有限会社は、繊維の産地だった新潟県長岡市(旧栃尾市)で創業して60年。織物・ニット商品の製造工程に関連するトラブルに対処して商品を生かすことに日々全力を尽くしています。「修整」は、そのままでは納品不可とされる「B品」をなんとか生かそうとする仕事です。衣類にトラブルがあったときに駆けつけることのできる「洋服のお医者さん」「救急病院」の意味から私たちは「アパレル界の救急ドクター」と呼ばれています。
前回、わたしたちの新たなチャレンジについてご報告をさせていただきました。
今回は、喫茶ランドリー事業の建物とそのストーリーについてご紹介します。
築52年の空き家を生かす
さっそくですが、当プロジェクトでわたしたちがリノベーションに取り組む建物の紹介です。
場所は長岡駅から徒歩5~10分ほど。アオーレ長岡(市役所)や殿町(飲み屋街)のすぐそばです。 築52年と年季の入った建物ですが、4階建てで屋外スペースまであり非常に高いポテンシャルをもっています。
当時、この場所では『米権もち店』というお餅屋さんが営まれ、赤飯や和菓子などが売られていました。90年代半ばにお店を閉めてから数年後、店主の方が亡くなられて10年近く空き家として放置されていたそうです。
新規事業部の立ち上げ当初、喫茶ランドリー事業の物件選びで頭を悩ませていた時期がありましたが、たくさんの物件候補がある中で、縁あってこの建物と出会いました。
わたしたちは、最終的に「この場所で事業に取り組もう」と決断をしたわけなのですが、決してよいことばかりではありませんでした。調査を進める中で様々な問題を抱えていることが分かり、決断に至るまでの道のりは簡単なものではありませんでした。
まず最初に、わたしたちを待ち構えていたのは大量の家具や荷物たちです。
その他にも
・雨漏り等で所々傷んでいる箇所がある
・水道管は錆びて使用できない状態
・駐車場がない
・大規模な改装工事が必要でかなりの費用がかかる
など課題が山積みでした。
膨大な手間と時間がかかるこの場所で事業を行うと決断するのは、わたしたちにとって非常に大きなチャレンジでした。
価値のないモノは一つもない
ではなぜ、わざわざそのような場所を選んだのでしょうか。
その理由の一つに、「商品を生かす」というわたしたち修整屋の信念があったように思います。
「今後この建物をどうしようか困っている」というオーナーさんのお話を伺う機会があり出会ったこの物件。
はじめて現地を訪れた際には、
長い間誰からも使われずに放置されている
もともと高いポテンシャルがありながらも、少しのキズや汚れによって価値を見出されずにいる
そんな姿がありました。
わたしたちの仕事は、トラブルの生じた衣類のキズや汚れを修整することですが、その姿を見たとき、不思議なことにトラブルを抱えて行き場をなくした衣類たちと同じような親近感がありました。
建物についての様々な課題が明らかになっていく一方で、建物の歴史やオーナーさんの想いを知れば知るほど「どうにかしてこの建物を生かせないだろうか」「何の価値もなく生まれてくるモノは一つもないはずだ」「衣類の修整ができるなら建物の修整もできるのではないか」とあきらめきれない気持ちが溢れ、いつの間にかわたしたちの修整魂に火がついていました。
すべての商品には「ものづくり」に携わる人々の想いが込められており、本来存在価値があります。ひとつひとつの商品に込められた想いを生かすという意味において、「ものづくりを支えている人たちを支えたい」というのが私たちの根底にある願いです。
どんなにキレイで条件のよい物件よりもこの場所を選んだ理由には、「そこにある歴史や人の想いを生かしたい」というわたしたちの願いがあり、「商品を生かす」仕事をしているわたしたちだからできること、やらなければならないことがあると信じているからです。
そのような背景があり、わたしたちは従来の修整の枠組みを超えた新たなチャレンジへと踏み出すことになりますが、わたしたちが取り組むことは分野は違えど「修整」であることに変わりはありません。
もちろん、事業内容だけを見ると喫茶ランドリー事業という全く新しいことにチャレンジするわけなのですが、その本質は「生かす」という修整の延長線上にあると捉え、新たな修整のかたちとしてわたしたちはこの事業に取り組んでいきます。