新潟県長岡市の衣類修整のプロ集団、山田修整有限会社専務の吉田です。
ひとくちに時代の変化と言っても、コロナウィルスのように人の命に関わる脅威をもたらす変化もあれば、未来に希望の火を灯すような変化もあります。「ラベルレス」の動きは、「未来への希望」であるとわたしは感じています。
人は「得体の知れない者」「マイノリティ」を排除して「安心感」「帰属意識」「集団の安定」を得ようとする傾向があります。また、「非行少年」のようにマイナスの烙印を押す「ラベル(レッテル)」は、社会生活において強力に働きます。ちなみに2021年発表の少年犯罪のデータでは再犯率が34.7%。つまり、3人に1人が再犯してしまうというのが現実です。いくら本人がやり直そうと思っていても、周囲の人々が「あいつは悪いヤツで信用ならない」というレッテルを貼って(ラベリング)そのように扱うならば、その人物はその通りの行動パターン(犯罪・非行など)を引き起こすようになるというわけです。「ラベリング理論」によれば、「人物」や「商品」のイメージ・特性は「ラベル(レッテル)」によって決まる、とされます。
非行少年が更生して社会復帰するには、本人のやり直そうとする意志、非行に結び付きやすい習慣行動や環境の整備、社会的な受け皿(職場や住居などの居場所)の他に、本人の更生を見守り支える家族と家族以外のサポーターの存在が非常に重要です。
わたしは家庭裁判所調査官という職歴もあってか、衣料品の修整においても、「B品」という「ラベル(レッテル)」を貼られた商品を通常のA品ルートに復帰させるのが使命だと考えています。
「ラベルレス」が市場で受け入れられるようになってきたという事実は、少なくとも商品レベルにおいては、ラベリングで得られる安心感やイメージよりも、「環境への配慮」や「ゴミ出しの際の利便性(ラベルをはがす必要がない)」の方が優位になってきたことを意味しています。「何が普通か?」という点でも、多様性を受け入れる社会的環境にシフトしていることの一端でしょうし、アパレル業界においても、サスティナブルファッションやリユース・リサイクルへの取り組みが年々盛んになっています。
「人の存在価値」はもちろんですが、「ひとつひとつの商品の存在価値」や「つくり手の想い」がますます生かされる社会に向かうことを願います。