こんにちは、新潟県の衣類修整のプロ集団、山田修整です。
わたしたち山田修整有限会社は、繊維の産地だった長岡市(旧栃尾市)で創業して57年。織物・ニット商品の製造工程に関連するトラブルに対処して商品を活かすことに日々全力を尽くしています。「修整」は、そのままでは納品不可とされる「B品」をなんとか活かそうとする仕事です。
【これまでの修整豆知識】
・繊維の種類(こちらをクリック)
・綿、麻、毛の三種類の繊維の特徴(こちらをクリック)
・絹、レーヨン、キュプラの三種類の繊維の特徴(こちらをクリック)
今回は、ポリエステル、ナイロン、アセテートの三種類の繊維の特徴について、詳しく解説していきます。
「それぞれの繊維にどのような特徴があるのか」ぜひチェックしてみてください。
ポリエステル、ナイロン、アセテートの三種類の繊維の特徴
ポリエステル
<特徴>
・合成繊維の王様
その秘密は強度とヤング率
・新合繊の主役
・断面形状は丸、三角、クローバなどさまざま
・単独でも紡績でも用いられる
・アウトウエアとブラウス・混紡Yシャツによく用いられる
<メリット>
・強くてシワになりにくい
・型崩れしにくい
・乾きやすい(速乾性)
・保管がしやすく扱いやすい
・超極細繊維が作れる
<デメリット>
・水を吸わない
・燃えると溶ける
・濃色と淡色の組み合わせは色泣きすることがある
・スナッグ(引きつれ)、ピリング(毛玉)ができやすい
・静電気がおきやすい
ポリエステルの原材料はペットボトル(PET)と同じ、ポリエチレンテレフタレートという化学物質です。この物質を高温で融解し、長い繊維に紡ぎあげたものがポリエステル。合成繊維として優れた性質をもつため、現在生産される衣料用繊維の半数近くがPET素材、つまりポリエステルであるといわれています。
元来は綿や麻などの天然繊維に似せて開発されたものですが、技術の進歩に伴ってその繊維は細くなり柔軟性を増しています。ポリエステルは、取り扱いがしやすい素材なので、お手入れが簡単です。そして速乾性や防しわ性に優れているため、旅行などでも活躍します。さらに改良によって、機能性や天然繊維の風合いを持たせた機能性ポリエステルのブランドも存在します。現在では絹のような美しい光沢も再現可能となっており、ウエディングドレスの素材にも使われるほどです。
ナイロン
<特徴>
・靴下、ストッキングの代表的素材
その秘密は強度とヤング率
・のっぺりとした円形断面の繊維が多い
<メリット>
・摩擦に強い
・軽い
・弾力性がある
・耐久性が高い
・手入れがしやすい
<デメリット>
・水を吸いにくい
・燃えると溶ける
・熱にやや弱く高温で溶ける
・黄ばみ、色褪せがおきやすい
ナイロンとは、主に石油を原料とする「ポリアミド」とよばれる合成樹脂から作られた繊維のことで、世界で2番目に生産量が多い素材です。
耐薬品性にも優れ、合成繊維でありながら染色しやすいという特性も持つため、衣料品を中心に幅広く活躍しています。スポーツウェアやバックなどに幅広く用いられており、元々は女性用のストッキングとして商品化されたのが始まりで、その後世界中へ広まっていきました。
ポリエステルとナイロンはともにシワになりにくい素材ですが、ナイロンは熱に弱く、ポリエステルは熱に強いというところが大きな違いです。ナイロンもポリエステルも摩擦に強く、よく似た特性を持っていますが、ナイロンは伸縮性が良く、ポリエステルは熱に強い特徴があります。また、共通で薬品には強いですが、ナイロンは耐酸性が低いのに対し、ポリエステルは耐アルカリ性が低いという特徴があります。
アセテート
<特徴>
・材料は天然、特徴は合繊
・婦人物にはときどき使われるが紳士物はネクタイくらい
・スジのある粗いギザギザ断面の繊維
・ナイロンより水を吸うが綿よりも少ない
・水洗いするときは中性洗剤を使う
<メリット>
・絹光沢より強い光沢がある
・絹やシルクのような柔らかさ
・プリーツ加工がしやすい
・撥水性が高く水を弾く
<デメリット>
・燃えると溶ける
・強度が弱い
・濡れるとさらに弱くなる
・アセトン(マニキュア除光液)にすぐ溶ける
・自動車の排気ガスや石油ストーブの燃焼ガスで変色しやすい
「アセテート」とは「アセチルセルロース」と呼ばれるセルロースと酢酸の化合物を原料にして作られた繊維です。コットンやウールが天然繊維であるのに対し、ポリエステルと同じような化学繊維のひとつなのですが、合成繊維と再生繊維の中間である「半合成繊維」とも呼ばれています。
アセテートの原料は、木材パルプが原料のセルロースと石油由来の酢酸です。この2つを反応させることでできたアセテートフレークというものを、溶かしたり漉(す)いたりして糸状にしたものがアセテートになります。原料は天然のものを使っていますが、化学の力を使って製造されているため、半合成繊維と呼ばれています。ちなみに半合成繊維は、植物由来のセルロース系と動物タンパク質系の2種類がありますが、アセテートはセルロース系に分類されています。
似た名前で「ジアセテート 」や「トリアセテート」という素材があり、これらはアセテート生地の一種なのですが、付加するアセチル基の数で呼び方が変わっています。アセチル基が2つ付いたものは「ジアセテート」、3つ付いたものが「トリアセテート」となります。アセチル基が複数ついたものは、1つだけのアセテートよりも形状安定性や耐熱性など強度が改良されており、衣類、資材などに幅広く使われています。